シェービングブラシとは、髭剃りの時に使う石鹸を泡立てるブラシのことで、髭ブラシ、泡立てブラシなどと呼ばれることもあります。理容室で髭剃りを体験したことがある方ならすぐに思い浮かぶことでしょう。蒸しタオルでゆっくりヒゲをあたためた後は、シェービングブラシの出番です。

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  2. シェービングブラシの使い方~おうちでバーバー#2
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乾いたヒゲは銅線と同じ。水分補給が大切

乾いた状態のヒゲの一本一本は、銅と同じ硬さと言われます。そのため、乾いた状態でカミソリを使用すると刃と肌に大きな負担がかかり、俗にいう「カミソリ負け」の要因につながります。ヒゲは水分を与えてあげると約4割膨張します。シェービングの前の水分補給はスキンケアの意味でも大切です。



人の体毛は、表面の毛表皮(キューティクル)・毛皮質(コルテックス)・毛髄質(メデュラ)と主に3層に分かれており、メデュラの中には無数の空気の穴(空胞)があります。この空胞に水分を浸透させることで膨張と同時に柔らかくなって剃りやすくなります。シェービングブラシを利用すると、毛先が毛穴の奥にまで届くので、中まで水分を与える事ができます。さらに速やかに水分を浸透させるにはお湯が最適。これらの効果で、より深剃りが出来るようになるのです。

新品はまず馴染ませる。熱湯に漬けてから

初めての方には先にお伝えしておきます。おろしたてのブラシは泡立ちが悪いものと思って下さい。なぜかというと新品のブラシには毛の脂分が豊富に詰まっているため石けんとの相性が悪く、お互いの脂分の強さにより泡立ちが悪くなるからです。そのため、新品のシェービングブラシをすぐに泡立ちの良い毛質にするのは正直難しいのですが、熱湯になじませることで、少しずつ泡立ちが変わってきます。

コップまたは同じくらいの大きさの容器に熱湯を注ぐ。熱いお湯が必要なので、グツグツと沸騰していなくても90℃くらいでかまいません。(ポットのお湯程度。火傷にご注意下さい)
真鍮製のカップは熱伝導が高いので、触る部分も熱くなります。陶器のマグカップ(※)などの方が良いでしょう。

理容室で見かけるシェービングマグカップについての記事もご参照ください


そこにシェービングブラシのブラシ部分の8分目くらいまで浸します。全部を浸けてしまうと、ブラシと柄の部分との接着剤が剥がれてしまう可能性がありますので、根元まで全部を浸けないようにしてください。

3分間ほど置いたら一度ぬるま湯ですすぎ、石けんを付けて使用すると泡立ちがよくなったことが感じられるでしょう。ただ、この方法で慣らすのは多くても3回くらいまでにしてください。使用するたびに繰り返すと、毛の脂分が必要以上に抜けてしまい、ブラシの寿命が短くなってしまいます。後は自然に泡立ちがよくなるまで根気よくお使いください。そのうちにきっと愛着も湧いてきて、泡立ちや馴染みの変化を楽しんでいただけることでしょう。

使い方のコツ。泡は顔の上で立てるもの

シェービングブラシの使い方というと、カップの中に入れた熱湯と粉石鹸を「シャカシャカッ」と泡立てるのを連想される方も多いと思います。衛生的な背景や使い勝手もあって、日本の理容室では粉石鹸を利用することが多いのですが、私たちがお奨めする方法は「自分専用の石鹸を好きなだけ顔の上で泡立てる!」です。

個人で利用する時には、丸形の固形石鹸を常にカップの中に入れておきます。これが実はトラッドなスタイルです。使う時には「カップの中で泡立てる」という意識ではなく「ブラシの毛先に石けんを塗り付ける」という意識に切り替えてください。もちろんカップの中で泡も立ってきますが、なるべく毛先に塗り付けることを意識します。そして「泡立てるのは顔の上」。好きなだけ存分に泡立ててください。

お湯で顔を濡らし(洗顔は必要ありません)頬のあたりからブラシで円を描くようにしながら動かしはじめて、だんだんと大きな円を描いていきます。そのうちにブラシの先端と肌の上から「シャワッシャワッ」と泡が立ちはじめます。この行為は「ラザーリング」とも呼ばれます。

ここで大切なことは、ブラシと肌の水分の量と石けんの量です。
水分が多すぎると、ダラダラと頬の上から首筋にかけて不快になる水滴が垂れてきます。かといって石けんの量が多いと泡立ちが悪く、硬い感じの泡が顔の上に乗り、これもまた不快になります。あとは「慣れと勘」。回数を重ねると自然にできるようになります。きめ細かい泡が顔の上で雲のように育つと、ちょっとした芸術を完成させたかのような満足感と優越感を味わうことができます。

いっしょにスキンケア洗顔もできる

時間がかかると気にされる方もいるかもしれませんが、ブラシを使うと一緒に洗顔ができるので、時短な上にブラッシングのマッサージ効果で血行も良くなり、肌の新陳代謝を高めて清潔な肌を保ちます。

また、耳裏などの箇所もブラッシングをすることで日頃手では届かない部分の洗浄も行えます。しっかりと洗うことで匂いなども軽減されることが期待されます。



洗顔する際には、まずブラシを石鹸で泡立てTゾーンを円を描きながら動かしていきます。毛先を潰さないように毛先でマッサージするように心がけます。



鼻・そして鼻周りなどの細かい箇所はブラシの先端を写真のように人差し指で潰すと使いやすいです。この方法、実はヒゲ倶楽部メンバーに教えてもらいました。


そして耳の下あたりから首回りにかけてブラシでマッサージしていきます。
泡立ちが悪くなったら石鹸をブラシに塗り込み&水分を足すと泡立ちが回復します。



後ろ部分は耳裏から下にマッサージしながら下ろしていき首回りの後ろまでブラシでマッサージします。
これも同じく円を描くように行なっています。細かい部分は鼻周りと同じく、親指や人差し指でブラシを潰して洗います。

穴熊毛と豚毛の違いと選び方

穴熊毛の最大の特徴は毛質にあります。毛、一本一本、毛先にまで脂分があるので水に濡れても絵の具の筆のように束にはなって固まる事なく水を弾いて一本一本離れています。また、毛は一本一本が先が細いのも特徴です。この毛が毛穴の奥の汚れもかき出します。



普段から常に穴を掘って生活しているため、自然に体毛が土に擦れ毛先が細くなり、尚かつ比較的気候の寒い場所にいるので毛先まで脂分が十分に行き届いております。また寒い場所で毛が水に濡れてしまうと、体温まで奪われてしまい致命傷になるので「パッ」と水分を弾き飛ばし常に毛を乾いた状態に保っているのです。

その特長を活かして作られたシェービングブラシは毛先が束にならずに毛穴の中の汚れを掻き出します。適度なコシと弾力もあり、空気をたっぷり含むので、きめ細やかな泡が驚くほどたっぷり泡立ちます。穴熊毛のシェービングブラシは世界で愛好されています。

ところが近年は穴熊も減少してきているようで、原料の高騰も見られます。



そこで注目されているのは豚毛です。豚毛の特徴は穴熊毛とは違い毛が固まるのが特徴です。豚は生息地が亜熱帯雨林で通常の温度での寒い地方では生息できません。常に暖かい地方でスコールなどの突然の雨に耐えれるように、毛に水分がつくと毛が束のように密着しあい皮膚を覆うようにして体温を保持します。雨も止みまた乾き出すと毛もまた自然と離れ合います。



ブラシとしての役割ははたしていますが、個人の感想としては、ブラッシング=「掻き出す」より「塗る」という言葉に近い気がします。先に石鹸でブラシで泡だてておき、顔の上にどちらかというと塗るように泡を付けていくイメージです。後はお好みですが、やはりお奨めは穴熊毛です。

お手入れはしっかりすすいで乾かす

お気に入りのブラシを手に入れたら、コンディションの維持も気になります。常にいい状態を保つために、お手入れのポイントもご紹介します。


・すすいで石鹸を落とす



お湯でも水でも構わないので、まずはブラシをよくすすぐこと。石鹸分を都度きれいに落すことでブラシが長持ちします。

・吊るして乾かす

シェービングセットやブラシセットなどには、スタンドなどにブラシが掛けられる場所が必ず用意されています。ない場合は、ブラシの毛先を下にして吊るして乾かしてください。
ブラシ単品で見る時には、ブラシの毛先が上になって、立てて置いてあることも少なくありません。ブラシは上か下か、どちらがいいのかと聞かれることもありますが、どちらでも大丈夫です。大切なのは通気性のよいところで保管することです。

とにかく避けたいのは、すすがずに石鹸分がそのままで放置したり、お湯や水の中に漬けっぱなしにしたりすることです。品質の良い毛ほど、ブラシの毛質が悪くなり、切れ落ちてしまいやすくなります。動物用のリンスやトリートメントを購入する方もあるそうですが、これは寿命や艶には関係はありません。良いシェービングブラシは、日常の手入れを怠らずにしていれば、長く使えます。少し面倒でも、末永く愛用するために大事に使ってほしいものです。

 ※音声はありません。サイレンス動画となります

 

オンラインショップで販売中。他にも種類はございます

イタリア別注の穴熊毛ブラシ
 

 


 

監修

カミソリ倶楽部 竹内教起
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